Home＞menu＞１ ２ ３ ４ ＞あらすじ第５話「嘘」＞６ ７ ８ ９ １０ last
銭湯の前で勢揃いしたあたる、さくら、カオル、天羽、伊倉、洋子の６人。 そこへやってきたのは、クリスマスにあたるをおいて消えたしまった健。 「自分のやったこと分かってんのかっ！」。 カヲルは思わず健に殴りかかった。 「やめて」。 健をかばったのは西村典子。体は細く弱々しげだが、芯は強そうだ。 「やっぱ原因は女だったんだ」。 さくらがつぶやいた。 ショックで固まっているあたると面々。 動いたのは天羽だった。吸っていた煙草を投げ捨てて歩き出す。 「いくぞ、あたる。」 あたるの肩を抱いて行こうとする。 典子がその名前を聞き咎めた。 「あたるさん？ あたるさんですか？」 「よせ。典子」健が止める。 振り向いた天羽は、健に挑みかかるように言い放つ。 「君にはお礼を言わないとな。こたつが縁で俺たちつきあい始めたんだ。」 健が眼を見開いた。あたるも驚いた。 やはり驚くさくらとカヲルを、伊倉と洋子がひっぱって去る。 健があたるに問いかける。 「そうなのか？」 あたるは答えられない。代わりに天羽がだめ押しする。 「ああ。行くぞ。」 あたるは天羽に肩を抱かれたまま、後ろ髪ひかれながらついて行ってしまう。 「なんであんな嘘言うのよ」。 ラーメン屋の屋台であたるは天羽にくってかかった。 「お前を捨てた原因も分かったんだ。今更傷つけあったって仕方ないだろう」。 「だからって、忘れたふりして、傷ついてないふりなんてあたしにはできないよ。」 「じゃあどうして否定しなかったんだ？ 俺とはつきあってないって。」 「それは・・。」 天羽は、あの時のあたるの心理を読んでいた。 「あっちには女がいた。こっちには何もない。これ以上惨めな思いはしたくない。 おまえさ、自分でも気づかないうちに、傷つくことから逃げたんだよ」 「そんなことないもんっ。」 無意識の自分を指摘されて、反論するあたる。 天羽はいきなり、半べその顔を両手ではさんだ。 「むきになるなよ。」 声が優しい。 「強がったってしょうがないだろ。」 自分の心を偽ることはできなかった。 洋子とのラブシーンをさくらに邪魔されたカヲル。 洋子が帰った後、こたつでさくらとあたるの心配をしている。 「あたる、遅いよな。」 「今頃嘘がほんとになってたりして。」 「え？」 「あのままあいつとベッド・イーン」 「まさか。」 「傷ついてる女は何するかわかんないからね。」 落ち着かなくなるカヲル。 「あー、あせってる。」 「あせってねえよ。」 「でもさ、わかんないよ。あの天羽って奴だってさ、あそこまで嘘ついてやるんだもん。 ちっとはあたるのこと、思ってるって事でしょ。」 「やっぱそうかな。」 「でなきゃあんなこと言わないって。あたるもあの嘘でちょっとは救われたと思うんだ。 そしたらそういうことになってもおかしくないでしょ。」 「あたるさ、あいつのリサイクルショップでバイトしてるんだ。」 「え、ほんと？ あたる、まじであいつにはまっちゃったのかな。」 洋子はもちろんだが、あたるのことも心配なカヲルだった。 帰宅したあたるの顔を見て、カヲルは内心ホッとした。 庭で日本酒を熱燗で飲むふたり。 「あの後、あいつとはどうしたんだ？」 「ラーメン食べただけ」。 あたるは洋子のことを聞き返した。 「やっぱなんか避けられている感じがするんだよなぁ」。 「カヲル、ストレートすぎるんだよ。少しはひかないと。」 つらいこともみっともないこともカヲルとは何でも話し合える。 あたるはささやかな幸せをかみしめた。 とはいえ健のことをすっぱりと忘れられたわけではなかった。 「なんか風邪っぽいんだよね」。 あたるは天羽にバレバレの嘘をついてバイトを早引けすると、 健と出会った銭湯の前ではりこんだ。 やがて健が典子と現れた。呼び止めるあたる。 「私、先に入ってるから」。 典子が銭湯に消えると、あたると健は近くの公園へ向かった。 すでに健は典子と一緒に暮らしているという。 「少し金貸してもらえっかな」。 健はクリスマスに黙って部屋を出ていったことを詫びるどころか、金の無心をしてきた。 あたるは持っていた有り金、１万円あまりを手渡した。 「返さなくていいよ」。 「そうだな。俺のおかげで新しい彼氏ができたんだから。紹介賃だよな。」 健はあたるの部屋の合鍵を差しだした。 「じゃあな」。 去っていく健。あたるの目からは涙があふれてきた。 「ひどいよ、健ちゃん。」 遠くから一部始終をみつめていた天羽。 健が立ち去ると、さりげなく声をかけてきた。 「おーい、こたつ虫」。 あわてて涙をぬぐったあたるがふり返ると、天羽は缶コーヒーを投げてきた。 「おごりだ。ほんとに風邪ひかれちゃたまんないからな」。 「ぬるいよ。」 「ぜーたく言ってるよ。」 それでも今のあたるには十分暖かかった。 会社帰りにリサイクルショップへ立ち寄ったカヲル。 銭湯から帰ってきた天羽が居た。 「あたるのこと、本気でないならちょっかい出さないでもらえますか？」 「なんだかんだ言って、君はまだこたつ虫のことが好きなんだ。」 「俺はただ、あなたとあたるは合わないと思うから。 これ以上あいつが傷つくのはみたくないし。」 「あれだな。こたつ虫のおとこ運の悪さは、君が原因かもな。」 思いもかけないことを言われて、カヲルは怒って帰っていった。 「健ちゃんとちゃんと別れてきた」。 あたるは帰ってきたカヲルに報告した。 「俺がお前のおとこ運、下げてんのかなあ」。 カヲルは天羽から言われた一言が気になっていた。 「鬼は外。福は内。」 ３人は豆まきに興じて厄落としを願った。 「世間は休日なのになあ」。 あたるが天羽の店でリサイクル品の手入れをしていると、洋子がやって来た。 「おいしいコーヒーでも飲ませてもらおうかな」。 天羽がコーヒーのしたくをしていると、さくらも顔をのぞかせた。 伊倉は日曜は家庭サービスで会えないらしい。 洋子をみつけていきなり戦闘態勢のさくら。 「最近ひからびてきたのよね。あいつも吸血鬼にやられたのかなあ」。 あたるの予感どおり、さくらは洋子にからみはじめた。 もちろん吸血鬼とは洋子へのあてつけだ。洋子は笑みを浮かべた。 「伊倉さん、離婚してるわよ。子供だっていないわ。」 「ウソよ」。 洋子は伊倉が１人暮らししているマンションを教えた。さくらは店を飛びだした。 「戻ってくるから」。あたるが追いかけた。 店内には天羽と洋子が残された。 「人とあんまり、関わりあいたくなかったんじゃないっけ？」 「それはお互いさま。あなたもあたるさんに関わってるでしょ」。 ２人ともあたるたちに振り回されることを楽しんでいた。 「言ってなかったっけ？」。 伊倉はいつものように落ちついていた。 昨年末、女房に男ができて離婚したという。 「さくらを騙して、ズルズル引っ張ってきたんじゃないっ」。 あたるは伊倉にかみついた。すると伊倉は、 「真実を伝えるだけが愛情じゃないだろ。それに君だって、 天羽さんとつきあってるって嘘ついたじゃないか。でもそれでいいんだよ。 現に誰も傷ついてないだろ。」 と笑った。図星をさされ反論もできずにあたる退場。 さくらは伊倉に平手打ちをし、「しばらく会わない。反省してろ」と部屋を出た。 伊倉は頬をさすりながらも、他の女からの誘いの電話にニヤついている。 どこまでも懲りない奴だ。 さくらと別れてあたるが店に戻ってみると、洋子は帰ったが菜々が待っていた。 「元カレに私、嘘ついちゃったんですよね」。 なにやら身につまされる打ち明け話をはじめた。 菜々も、新しい恋人ができたと嘘をついたらしい。 「そんなの優しさじゃない！自分が傷つくのが嫌だから逃げてるだけじゃない！」。 あたるは思わず叫んでいた。 「今日はもう帰っていいぞ。そんなんじゃこっちが迷惑だ。」 天羽はあたるの胸の内を見すかしていた。 「なにやってんだろ、あたし」。 雪の降る帰り道、自己嫌悪に陥るあたる。涙が訳もなく流れる。 部屋でいつものようにこたつ虫を決めこんでいると、ドアがノックされた。 「これ、ほんと縁起悪いぜ。こんなん置いといたら店つぶれっちまうよ。」 天羽がそういいわけをしながら、あたるの部屋にあった電気ストーブを返しに来た。 追い返したことを気にしてくれていたのだ。ちょっと嬉しいあたる。 「あの、すみません」。 突然典子が立っていた。あたるは固まる。 帰ろうとした天羽の腕をつかんで押し戻す。 「いてよ。嘘でも恋人でしょう」。 「これ、お返しします」。 典子はあたるが健に渡したお金を差しだした。 「健ちゃん、本当はあなたに謝ろうとしていたんだと思う」。 ところが天羽を新しい恋人だと信じて、謝れなくなりお金の話にしてしまったらしい。 あたると出会う前に、健は典子と２年間つきあっていたという。 「私が健ちゃん忘れられなくて、それで電話して」 「私には健ちゃんしかいないの。でもあなたにはこの人も、カヲル君だっている。」 「だから健ちゃんはもういいよね。」 あたるに対して敵意むき出しの言葉。とどめがあった。 「私、妊娠しているの。健ちゃんの子供よ」。 あたるはショックで言葉を失った。 典子が帰っても、固まったままのあたる。 「傷ついてないフリして、忘れたフリして生きていくか？ そんな生き方、お前にはできないんじゃなかったっけ。」 天羽の言葉にあたるは立ち上がった。 外へ飛び出したが、すでに典子の姿は見えない。 「あたる。乗れよ。」 天羽がメットを投げた。健の住所を天羽は知っている。 バイクで二人の部屋へむかった。 「あたし、あの人とはつきあってないわ。嘘よ。」 ほんとうのことを告げるあたる。戸惑う健と典子。 あたるは健宛ての郵便物を差し出した。 「健ちゃんはあなたにあげる」「健ちゃんをよろしくお願いします。」 つらくてもこれが自分なんだ。こういう風にしかできない。 涙をこらえてゆっくりと歩いて帰る。 そのあとをバイクを押しながら天羽はつきあってくれた。 リサイクルショップへ戻ったあたるは、健との写真を燃やした。 じっと黙って耐えていたあたる。 「ここにはこたつもないしなぁ。」コーヒーをさしだしながら天羽が言う。 「こんな時こそ、抱きしめてみてくれるっていうんじゃないのか？」 無理して笑おうとするあたるに、天羽は両腕を広げた。 「ほら。」 天羽のあたたかい言葉にこらえていた涙があふれ、 あたるは子供のようにしゃくりだした。 立ち上がったあたるのカップを取り上げると、泣くならここだよと胸を叩く。 その胸でエンエン泣くあたる。 天羽は黙って抱きしめてくれた。 そのころ、カヲルは玄関で倒れ込んだ洋子を介抱していた。 彼女が持っていたのは・・・妊娠検査薬？ さくらもドラッグストアで同じものを握っている。え？ だいぶ落ち着いたころ、あたるにも異変が起きた。 吐き気を覚え流しにしゃがみこむ。 驚く天羽。「おまえ、まさか？」 たった今ふっきってきたのに。 もしかして、あたるも・・・・・？？？。 |