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天羽があたるに『ボランティア』のキスをして、リサイクルショップは大騒ぎ。 天羽の胸ぐらをつかんだカヲル。それを止めるあたるとさくら。 そこに何故か、洋子と伊倉が一緒に現れた。 カヲルとさくらはそれぞれショックを受ける。 「この女と寝たの？」伊倉に詰め寄るさくら。 「私は私、誰の持ち物でもないわ。」それはおそらく洋子の本音だ。 さくらは洋子を平手打ちすると、店を飛びだした。 カヲルもまた、店を後にする。 あわててあたるもふたりを追った。 「あいつらの本性が見えて良かったじゃん」。 あたるの声も、いまのさくらとカヲルには聞こえなかった。 天羽・伊倉・洋子の３人は店で歓談している。 「それにしても仲のいい幼なじみね。」 「あのお姉ちゃんとカヲル君、つきあってたことあるらしいよ。」 「なるほどね。」と天羽。 「案外カヲル君が、シングルマザーの父親候補だったりして。」 「さあ、それはどうかしら？」 洋子は意味深な視線を天羽に向ける。 「えー、そっちいっちゃうの？」のんきな伊倉だ。 「あんな女に伊倉は渡さないわ。 気合いれて本気にさせてさ、こっちから捨ててやる」。 さくらは洋子への敵意をむきだしにした。 そしてカヲルもけしかけた。 「カヲルもそうしなよ、本気にさせて捨てちゃいな」 「そうだよ。あたしも協力するからさー」。 あたるも洋子のことが気に食わない様だ。 カヲルは一人、ため息をつく。 店では伊倉達がまだ飲んでいた。 天羽が一人、リサイクル品の修理をしている。 「あなたってわからない人ね。」 洋子は天羽に興味津々。 「そうかな。至って平凡な男だけど。」 伊倉はつまらなそうに立ち上がる。 「僕、お邪魔みたいだから。これで二人分ね。」 札を置いて帰ろうとすると、天羽が声をかける。 「ちょっと、置いて行かれても困るんですけど。」 「あら、それってふられたってことかしら？」 「あいにくうちは、人間のリサイクルは扱ってないんで。」 「じゃ、お持ち帰りってことで。」伊倉の腕をとる洋子。 「こ、これって役得？」ちょっと嬉しそうな伊倉。 ３人の会話は大人の遊びだ。 翌日、あたるはカヲルから３千円を借り、天羽からやっとコタツを買い戻した。 「かついで帰るのか？」 「そうよ。文句ある？」 部屋への長い坂道をこたつをかついで登るあたる。 途中へたりこんでいたら、天羽が車で声をかけてきた。 「のせてやろうか？」 「どうもー、なんていうわけないでしょ！」 あたるがはねつけるとあっさり通り過ぎてしまう。 ちょっと期待していたのに。 「・・誰があんな奴の車になんかぁ。」 意地でまた登り始めるあたるを、バックミラーで笑いながら見ている天羽。 ようやく部屋の前まで辿り着くと、なぜか天羽が待っている。 一瞬取り返されるのかとあせったが、部屋までこたつを運びあげてくれた。 「あ、ありがと。」 「配達料。」 手を出されて財布を取り出すあたるに、笑う天羽。 「冗談だよ。」 くわえ煙草で上がってきたので、煙草の灰が落ちそうだ。 灰皿がないのであわてて、灰皿になるものを探して差し出す。 「セーフ。」 「クリスマスにおまえを捨てて逃げた男は、吸わなかったんだ。」 「だから、そんなに具体的に言わなくったって。」 やっぱり憎たらしい。 「会社もクビになったんだろ。うちでバイトするか？」 「へ？」 「日払いでいいよ。・・そうだな、６千円。」 「何たくらんでるの？」 いきさつがいきさつだけに、素直には聞けないあたる。 「別に。・・おまえに惚れただけだよ。」 急に真面目顔で言うので耳を疑うあたる。なんだこいつ。 「・・その、腕っぷしにな。」 笑い出す天羽。やっぱり嫌な奴だ。 「えー、断っちゃったの？ いいじゃん、あそこで手を打てば？」 「あいつの世話になるのだけは絶対イヤ。」 断固として意地を張るあたる。 さくらも意地を張っていた。伊倉から電話がかかってきても無視。 「会わない作戦よ」。 しかし伊倉はそんなことすっかりお見通し。 天羽の店からかけていたのだ。洋子も又現れる。 「ここは飲み屋じゃないんだけどな。」 「あたしにも何か下さる？ そうね、ジントニックでいいわ。」 「はいはい。」 なんだかんだとつくってやる天羽。 洋子相手に「むこうにつきあっているだけだよ」と、伊倉は余裕の笑みをのぞかせていた。 カヲルは会社で洋子に無視されて落ちこんでいた。 「あの洋子虫の手だよ」。 今度はあたるが励ます番になった。 「ああいうタイプの女って、意外と寂しいと思うんだよね。 だから気落ちしている時にそっと抱きしめたら、コロッだよ。ほらやってみ。」 カヲルはあたるに言われるまま抱きしめたが、互いにクスッと笑ってしまった。 「やっぱりあたしたちって、恋人じゃダメなんだ。幼なじみでなきゃ」 「でもお前がいてくれて良かったよ」。 ２人だけの時間はとても居心地よかった。 あたるは就職活動に励むが、ことごとく全滅していく。 それでもめげずに出かけて行く途中、店の前で天羽に出くわす。やばい。 「お、就職活動、がんばれよ。」気楽に声をかけてくる天羽。 「こたつが戻ってよかったな。」 ちょっとうれしくなって振り返ったら、甘かった。 「落ちても、こたつ虫できるじゃん。」 苦虫をつぶして去っていくあたる。 見送る天羽の顔は、何故かちょっと優しい。 カヲルがあたるのアドバイスを試してみるチャンスが早速めぐってきた。 会社の屋上で洋子が１人きりで泣いていた。 「強い女の看板、ずっとしょってきたから、甘えることもできなくて・・・」。 カヲルは洋子を優しく抱きしめた。 「大丈夫だよ。・・・いつだって、俺がいるから・・・」。 洋子は笑みをのぞかせた。 「いたいけな女の子になれた気がするわ」。 たまたま、会社によってその様子を偶然見ていたあたる。 心が痛く、切ない思いで踵を返した。 「ごめんください」。 さくらがあたるの部屋で留守番していると、伊倉がたずねてきた。 「俺・・・お前がいなきゃダメなんだ・・・」。 その一言でさくらの気持ちはまた伊倉の元に。 あたるが帰宅してみると、２人は仲良くスキヤキの準備をしていた。 「お願いお姉ちゃん、今夜はカヲルんトコに行って」。 自分の部屋を追いだされたあたるは仕方なくカヲルの家へむかった。 切なく寂しい思いで、こたつ虫をしていると、「ただいまあ」、カヲルが帰ってきた。 うれしくて玄関まで迎えにでたら、洋子と一緒だった。 「鍋に誘ったんだ」。 楽しげに台所で用意をはじめた２人を目の当たりにしては、 あたるも気をきかせなくてはならない。 「今夜は自分ちに帰るから。さくらも戻ってこないから。健闘を祈るわ」。 カヲルにそっと耳打ちすると、あたるは明るさを装って出ていった。 行き場なく歩いていると、「おーい、こたつ虫」。 天羽の店の前だった。 「今、こたつ虫って言った？」 「こたつ虫だろ、おまえ。自分で言ったじゃん。」 「そりゃ言ったかもしれないけど、人に言われるのは違うの。」まわしげりをかます。 「年上女に元彼をとられたのかな。」 この男、あたるのことはすべて見通している。 「・・・なんで知ってるの？」 思わず店へ入って聞く。 「さっき二人で仲良く歩いてったからさ。あ、お前追いだされたんだ」。 「違うよ。あたしが気つかって出てきたんだよ。」 「へぇー、気を使ってね。」 「その、へえーってなによ。」 「無理してない？」 「別に無理なんかしてないよ。カヲルは今、幸せつかめそうなんだし。 ここしばらく恋人なんかもいなかったし。」 「前つきあってたんだろ。」 「そりゃそうだけど、今はただの幼なじみだし。その方が楽だし。 カヲルはあたしの分身みたいなものだから、幸せになって欲しいし。 だから、これでいいんだよ。」 なんとなく、机の上にあった花瓶を手でもてあそびながら、自分を納得させるあたる。 「それ、10万。」 「え？」 「おまえが持ってるその花瓶。10万。」 「ええ！？ うわぁ。」 あわてて離して、落としそうになるあたる。 そんなあたるに、天羽は何故か優しく言う。 「寂しい時は、寂しいって言えばいい。泣きたい時は、泣いてもいいんだぞ。」 ちょっと慰められた。と思ったら。 「なーんて台詞、言ってもらいたいんだろうな、お前みたいなタイプ。」 このやろー！ 「下見行って来るから、店番やっててよ。」 「えー？」 「バイト代、はらうからさ。まだ仕事決まってないんだろ。」 「そう、そうなのよ。って、それとこれとは違うでしょぉ。」 あたるに構わず、天羽はバイクにまたがると行ってしまった。 「なんでこうなるかなー？」 「伊倉さんとは寝てないわ」。 「信じますよ、俺は」。 カヲルがあたるのことを話題にすると、洋子がキスしてさえぎった。 「私がここにいるのよ」。 洋子はカヲルの首筋にかるくふれた。２人は抱きあうと、再びキスした。 「今夜は泊まれるよね」 「そのつもりだ」。 さくらも伊倉とヨリを戻していた。 「なんかいいよね。結婚とかしても、あたしたちってこんな感じかな」。 ついクチを滑らすさくら。 「おまえ、俺なんかと本気で結婚したいと思ってるんだ。」 伊倉はさくらの思いに気づき、内心そろそろ潮時かなと考えていた。 天羽はなかなか戻ってこなかった。店内は寒くて仕方ない。ウロウロしてしまう。 「遅いなあ。もう２時間だよ。」 ふと目についた酒のボトルに手をのばしたあたる。 一人でさんざん飲んで、騒いで、わめいて。 あげくに酔っ払って、そのまま寝てしまった。 ようやく帰ってきた天羽は、カウンターの上で眠り込んでいるあたるを見つける。 笑みがこぼれるが、飲みまくったお酒をみつけて呆れる。 「しょうがねえなあ、こいつ。」 揺り起こしてみる。 「起きろ」 答えはない。と、あたるの携帯が突然鳴った。ガバッと起きあがったあたる。 が、次の瞬間また眠り込む。 「なんだ、こいつ。」苦笑する天羽。 鳴り続ける携帯の着信を見ると、砂山健と出ている。 天羽の顔が険しくなる。 「あいつか。・・・もしもし？」 とたんに切れてしまった。 何も気づかず、眠っているあたる。 店の後かたづけをすませた天羽は、仕方ないという顔であたるを抱き起こそうとする。 するとあたるは、天羽の首に抱きついてきた。 ちょっと驚いた天羽。 だが、あたるの「健ちゃん・・。」というつぶやきに納得する。 しょうがねえな。 あたるを抱き直すと、奥のソファベッドまで運んで寝かせてやる。 寝顔が無邪気だ。 めがねを取る天羽の顔は、ちょっと複雑な表情に見える。 深夜、カヲルの部屋で洋子が、排卵日をチェックしていた。 ほほえみが謎だ。 あたるが目覚めたのは翌朝。 となりには天羽が下着姿で寝ていた。 「ウソッ・・・」。 あたるは自分も下着姿になっていることにさらに驚いた。 あせるあたるの横で目を覚ました天羽。 「おはよ。」 「・・・おはよう。」 あたるのとまどった顔に微笑む天羽。 「・・寝てないよね？」 「寝たよ。」 「！！！」 うそでしょ〜！！ |