番外編　「Kiss　in　the　Cup　＋α　」

番外編　「　Kiss　in　the　Cup　/　＋α　」

最後のキャンディは紫－－。

たった一つしかなかったこの色が、どうも危なくて。
あたるは今日まで、手を出す勇気がなかったのだけれど。
残り一つじゃ逃げ道はない。

「じゃ、じゃあ。これで終りね。」

ついさっきまで、さんざん天羽に怒って、
華代の足したキャンディを無効にする約束をとりつけた後。
渋々、最後の一つを口にしたあたる。
エイヤっと放り込んだキャンディは、ラズベリーでなかなか美味。

「・・・で？　これってどこなの？」
「どこだと思う？」
「うーん・・・・。」

これまで思い出してみるに。
唇に頬、耳に鼻。
額に瞼。
あとはどこが残ってるだろ？

口をもぐもぐさせながら考えていたあたるは、
不意に抱きしめられて我に返った。
華奢な腰を天羽の腕が後ろから拘束して、伸びた髪に顔を埋めてくる。

え？　え？

いきなりで驚いているあたるに構わず、
髪がスイッとかき分けられる感触。
唇が落ちてきたのは、うなじだった－。

「ひゃっ・・！・・」

思わず上げた声にクスッと笑う天羽。
かかる息まで首筋をくすぐる。

「ラストがここってのも、意味深だよなぁ。」
「・・・い、意味深・・・ってどういう・・・やっ！・・」
「こういう。」

腰をとらえた手が、すでにいたずらを始めている。

「よっ・・・良之って！・・・お、大家さんちに行か・・・あぁっ・・」
「まだ早いじゃん。」
「こ、こらっ・・・あっ・・・・・んん・・っ・・・！」

のけぞった顎を逃さず、重ねた唇から忍び込んだ舌が深く探ってくる。
ラズベリーの味を共有するために。

「・・・んと・・・・甘い・・・な・・」
「・・・・・はっ・・・あんっ・・・・・ばっ・・かっ！・・ぁん・・」

ここでも天羽には勝てず。
休日の朝ご飯代わり？
あたるはラズベリーキャンディと一緒に、いただかれてしまったのだった。

二人ともさぞや、
お昼のお好み焼きは美味しかっただろう・・・・というお話。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　＋α　／end　＞