初めて聞いた時は、てっきりジョークだと思ったもの。
笑っちゃったわ。
キングよ? あのキングがよ?
ぬいぐるみ抱えた女の子とツーショットで歩くなんて。
人間生きてみるものよね。あり得ないと思ってたことが起きるわ。
アポロ月面着陸以来のニュースよ、私に言わせると。
……いやだ年がばれるわね。
とにかくそんなこと聞いたら、相手は一体どんな娘なのかしらって思うでしょ。
つまり私にすれば千載一遇のチャンスだったわけ。
やけにフロアがざわついてたの。客によっては一触即発って感じ。
何って思ったら綺麗な娘がいて、しかも噂の彼女だっていうでしょ。
周囲はどんどん殺気だつし。この際って同じ席に招いたの。
来るかしらって思ったらあっさり来るじゃない?
ニコニコして人の話聞いてうなずいて。
もっと鼻っ柱強いかと思ってたからびっくりしたわ。
キングと知り合いなのよって言ったとたん、不安げな顔して。
突然よ。
『つきあってたんですか?』
もう笑った笑った。大爆笑。
周りのホスト達もまさかの質問だったらしくて、大慌てに大騒ぎ。
キングって存在自体が若いホストには神格化してるから。
彼の過去とか聞きたくても聞けないのよね、なかなか。
長いつきあいだけど、彼は商売はともかく、性癖は至ってオーソドックスでノーマルよ。
……そのはず。 私が知ってる限りはね。
だから最初に噂を聞いた時は、とうとうロリにでも走ったのか、なんて思ったわけ実は。
内緒よこれ。
ロリって言うほど若くなかったわね。
彩芽みたいな娘もイメージしてたんだけど、はずれだったわ。
若いけど、お馬鹿ってわけでもなさそう。
すっかり話し込んじゃったわよ。人生相談までされちゃった。
まだまだ悩み多き年頃ね。
あの調子でキングを振り回すなら、頼もしいかも。
ん? だってね。
彼って大事にしてくれそうでその実、女を振り回すでしょ。
ああいう男を繋ぎ止めるには意外性が重要よ。ポイントかな。
あの娘、消えぎわになんて言ったと思う?
『キングの、最後の女性になりたいんです』
こうよ? すごくない?
笑うのを通り越して感心しちゃったわ。
使い古された、それでいて相手がキングだと、壮大な野望に思える言葉よねえ。
若い娘の本気の眼って効くわよ〜。
しびれちゃった。
キングもぼちぼち年貢の納め時かしら。楽しみだわ。
そう思わない?
< ryoko's Hitorigoto / end >
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