ありがとう、またきてねーって、表通りまで客を見送った時だったわ。
通りの向こうを足早に歩いていくのは、キングじゃないの。

彼を見るのは珍しくないけど、その様子がいつもと違って。
どこがどうって説明は難しいけどね。
なんだろ、余裕がない？　あり得ないよね。

おまけにもっとあり得ない人たちを見ちゃったんだから。

あれって右生？
隣にいるのって彩芽？
ええっ？


うそだあーって今なら叫べるけど、あの時は唖然茫然ただ傍観。
腕くんで寄り添って仲良さそうにしゃべりながら、遠ざかって行っちゃったわ。
開いた口がなかなか塞がらなかった。


なんだろうなんて言うの？
ぎょっとしてほわっとしてすとんと納得。
一緒に居たんだなぁって。

なんだか凄く感慨深かった。


彩芽がいた三ヶ月。それから右生が消えるまでの三ヶ月。
時々夢だったような気がしてたの。
ふたりはどうしてるんだろうって、思ってたの。


夢じゃなかった。しっかり一緒にいるじゃない。
悔しいようなねたましいような、何か蹴飛ばしたいような祝杯をあげたいような。

ものすごい複雑で、そのくせやっぱり嬉しかったのねあたし。
その後、店に帰って思い切りテンションあげちゃった。
おかげで売り上げ超すごくて、マネージャーに驚かれちゃった。

え？　もちろんずっとトップはキープしてるって。
当然よ。



でもおかしいの。
ふたりを見たあたしが駆け寄りそうになったのって、彩芽の方だった。
変よね。どうしてだろ。

ほんとおかしな娘だった。忘れられない。


そういえば、キングに彼女が出来たって噂。
あれ、ほんとかしら。
キングにねえ？　ちょっと想像できないんだけど。


ここんとこ景気悪くてご無沙汰してたし。
久しぶりに行ってみようかしら、Man　Hall。

ねえ、一緒に行かない？





　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　rira's　Hitorigoto　／　end　＞