式の後、披露宴までの間に記念写真の撮影が入っていた。チャペルでの感動さめやらぬままに美羽とスタジオに入った丈。だが二人だけではなかった。


写真は二枚撮った。一枚目はもちろん花嫁と花婿のツーショットだ。タキシードの丈とドレス姿の美羽が並んだ写真は誰がみても幸せそうに見えただろう。

撮る最中もつい潤んでしまう美羽の眼を、そのたびに丈が拭ってやる仕草がスタッフにため息をつかせた。スナップショットに納められたのを後日、ショーウィンドーに飾ってもいいかと問い合わせを受けたのだから、いい写真だったのだろうと思う。


もう一枚は家族写真だった。チャペルでさんざん泣いた母親たちが、待って待ってと懸命にメイクを直す。ほほえましいやらおかしいやら。

「ののさん、もういいって」
「だって一生残るのよ？」
反駁する妻に温が呆れた顔をする。

「嬉し涙なんだから、いいじゃないか」
「そうだ、これも記念だよ」
謙介も同意すると道江がにらんだ。

「どうせならきれいに撮られたいのが女心なの」
「お母様方、とてもおきれいですよ」
メイクスタッフのとりなしに、ののも道江も鏡を見て仕方ないわねとあきらめる。

「主役は二人だわ」
「お母さん、あたしなんかずっと涙目よ」
「美羽のはウサギ眼で可愛いじゃないか」
丈の自覚のないのろけに苦笑しながら、スタッフの指示に従ってそれぞれが位置につき、撮影が行われた。


できあがった六人での写真は中央に美羽と丈が座り、美羽の右に道江、後ろに謙介、丈の左にのの、後ろに温が立っている。二つの家族から三つの家庭に、そしてひとつの家族になった六人。

まじめな顔でとるつもりが結局、笑っている写真になった。ちょうど温が何か言ったところだ。美羽と丈が顔を見合わせて、ののが温を見上げて、謙介が道江をふりかえって、一斉に笑いあった瞬間だった。

静かな感動にあふれた式とは対照的な、一分と静けさが持たない笑いに満ちた撮影。カメラマンはもちろんスタッフも一緒に笑いながら、不思議と感銘を受けていたようだ。

「いいご家族ですね」

なんとか撮影を終えて披露宴へ向かう途中、案内をしてくれたスタッフがしみじみと言った言葉を、丈は嬉しく心にしまいこんだのだった。





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