「Truble　Vacation」　２．　planning　－計画

「Truble　Vacation　２×２」　２．　planning　－計画－

夏休み。
お互い忙しい仕事のスケジュール。
どうにか摺り合わせられたのは４日ほど。
無謀にも二人は旅行することにした。
時間と予算はかなり限られているのだが、希望だけは大きく。

「やっぱり海！」
「好きだなー、おまえ。」
「嫌いだっけ？」
あたるはソファに座ってパンフレットとにらめっこしている。
「いや・・・好きだぜ。」

不意にのぞきこまれたと思ったら、キスがかすめ取られた。
「・・っ！　なっ、なんの話してんのっ！」
スリーテンポぐらいずれて固まるあたる。
「好きの話だろ？」
パンフレットを手に、涼しい顔がにやり。

「どこに行くかの話しでしょーがっ！」
そっぽ向いた背中が照れまくってる。
二人だけだって言うのに。
笑った天羽は手元のパンフをパラパラとめくる。

「海なら潜れる方がいいなぁ。海外ってのは？」
「４日で？　マジ？」
「グァムなら。」
「あたしパスポート持ってないもん。」

「それこそマジ？　今時パスポートくらい持ってろよ。」
「必要なかったんだもん。」
「しょうがねえなぁ。国内だとそれこそ、小笠原とか？」
「・・・あなたは持ってるの？　パスポート。」
今度はあたるがこだわる。

「現代人の常識？」
「うそ。・・・使った事は？」
「普通は使うから取るんだろ？」
「そりゃそうだけど・・・・なんか悔しい。」

「悔しかったらとれば？　身分証明代わりになるし。」
「そういうもん？」
「そーいうもん。　・・・沖縄は？」
突然切り替わった話題に、ポカンとする。

「おきなわ？」
「ああ。国内ならやっぱ、一番きれいどころ。」
「行きたい！　行った事ないし。そんなに綺麗な海？」
「昔よりは荒れてきてるって言うけどな。
　潜るならピカイチだろ。珊瑚礁は別格。」

「さっきから潜る、潜るって言うけど、素潜り？」
あたるの疑問に笑う。
「まぁ沖縄ならそれもいいけどさ。どうせならダイビングだろ。」
「ダイビング？　それって・・・あの、
　背中になんか背負って？　重いよ～。」

「水の中だから全然ＯＫ。」
「そんなこと言ったって、あたしはやったことないし。」
最初から逃げ腰のあたるに、しょうがないって顔になる。

「ならさ、シュノーケリングにしといてやる。
　初心者でも絶対平気。」
「シュノーケリング？　どう違うの？」
「深さ。タンク背負わないから。
　浅いところしか見られない。でも簡単。」
「ほんと？　ならそれがいい。」

「その代わり、一番綺麗なところ見逃すぞ。」
「・・・どうしてそう意地悪言うのー？」
「意地悪じゃなくて事実だって。」
「うー。」

天羽をにらんでうなるあたるに、横目で笑って。
「ま、行ってから決めるか。天気もあるから。
　台風なんかに当たったらどうしようもない。」
「だからどうしてそういうっ！？」

沖縄を目的地に決めたふたりは、
レンタカー付きのフリープランを予約する事にした。

「送迎バスとかあるんじゃない？　ホテルに。」
「そりゃあるだろう。・・・おまえ、わかってる？
　沖縄って鉄道ないんだぜ？」
「またー。」からかわれてると疑わない。
「物知らねえなぁ。有名じゃん。」

天羽の視線にやっとそれが冗談でないと悟る。
「うそ。えーっ？」
「それもあるから。車ある方が楽だって。
　おまえの運転も上達したしな。」
「そう？　そうだよね？」

珍しくほめてもらってあたるが嬉しげだ。
免許を取ったのは３月。
以来仕事で、現店長の佳織にこき使われ。
おかげであたるの運転は、
経験値と共にレベルアップしていた。

「二人とも免許あるなら余計に車だろ。
　あ、免許証忘れんなよ。」
「うん！」
そんなこんなで。

東京から２時間半の空路。
那覇空港からレンタカーを走らせ、
二人は宿泊ホテルへやっとたどり着いたところだったのだ。