「Truble　Vacation」　１．arrive　－沖縄

「Truble　Vacation　２×２」　１．　　arrive　－沖縄－

ドサッ。
投げた荷物がスプリングに跳ねる。
その振動を揺り返すように、あたるもベッドへ身を投げた。
「あーっ、やっと着いた。国内だってのに遠いよー。」

あたるのぼやきとも愚痴ともつかぬ言葉に、
後ろから入ってきた天羽が苦笑する。
「なんだよ。旅行なんだから、
　ちょっとは距離がなきゃつまんないだろ。」
そう言われればそのとおりなんだけど。

「天気はどうだろ。
　こればっかりは注文できるもんじゃないからな。」
今のところは曇り空に日射し。
夏にありがちな台風だけは避けられそうな天気図だったが。

「あたし、晴れ女だもん。平気だよ。」
「そうだっけ？」
「・・・たぶん。」
「なんだよ、それ。」

クスクス笑いながら、天羽は荷物をほどいている。
「ほら、時間がもったいない。行くぞ、支度しろ。」
「んー・・・ねむい。飛行機であんまり寝られなかったし・・・。」
ベッドでゴロゴロしているあたる。
なんだか今にも寝てしまいそうだ。

「おいって。」
呆れかけてしかし、
天羽は口の端に人の悪い笑みを浮かべる。

すでに目を閉じていたあたる。
急に体が沈む感覚と、首筋の感触にビクッと眼を開けた。
え？
目の前に天羽の顔。覆い被さってる体。
え？　え？

「誘ってんなら、誘われるけど？」
その眼が半分悪戯、
半分本気の危ういところで揺らめいている？
「お、起きるっ。起きますっ！」
いくらなんでもついた早々、真っ昼間にそれじゃあんまりーー。

「なんだよ。てっきりその気かと。」
クッと漏らす笑みは余裕。
「ちがうーっ。」

ともかく逃げないとまずい。
そう判断してすり抜けようとするが、逆に抱きしめられる。
「だからごめんって。起きるってば～っ。」
ジタバタと暴れるあたるに、笑みは絶えない。

っんとにいつまでも焦る奴だな。
一緒に暮らして半年近いっていうのに。
まあそこがらしくもあり、遊べるところでもあるんだが。

「おまえね、もうちょっと自覚しろよな、やってること。」
「だからそんなつもりじゃないって。」
「誰だってそう見える。」
「眠かったんだもんーっ。」

とても艶事にはならないにぎやかさだ。
どっちに転んでもいいかと思っていた天羽。
ちょっと惜しい気もしたが、やっと腕をゆるめてやる。
即逃げ出すあたる。

「もうっ！」
ふりかえって怒ると真っ赤な顔を笑われて。
あたるはふくれつつ、バカンスの始まりを予感していた。