「花紅柳緑」　２０．　大逆転

「花は紅　柳は緑」　２０．　大逆転

ちょっと感動モードに入っていた教師たち。

そこに。

「先生、ラップはやっぱわかりにくいですかね？」

いつのまに来ていたのか、声をかけたのは完。

「い、いや。なかなか・・・こういうのもラップって言うんだねぇ。」

まだ余韻が抜けきらず、言葉は素直に感嘆している。

「音楽はアレンジで変わるんですよ・・・・よかったですか？」

畳みかけるようなその口調は、弁論部長お手の物。

「あ・・あ。意外だった・・ね？」

「ですねぇ。なんか、グッとくるものが。」　隣の教師も同意する。

「これなら、応援合戦もおもしろいんじゃないか・・・とか？」　完の目が光る。

「そうかもしれん・・・っ・・い、いやその・・。」　教師達の口が滑った。

「ほんとですかっ！？」

すぐそばにいた紀佳が、この機を逃すわけもなかった。

「に、二木くん。君そこに・・？」

「先生、あたしもまさか校歌が聞けるとは思ってなかったんです。

　でも素直に感動したんですよ。お願いします。是非体育祭でやらせてください。

　ベースをこういう校歌とか、応援歌にするという形ならどうですか？」

「う・・・んまぁ・・それなら・・・なんとか・・？」

顔を見合わせる教師陣。

すかさず完が押す。

「そりゃ生徒達も喜びますよ。先生達の寛大さに。

　じゃ、そういう話し合いは熱いうちに。早く生徒会長と職員室で詰めていらしたら。」

「お願いしますっ。」

「わ、わかった・・。ともかく校長と教頭に話すから、ちょっと待ちなさい。」

こうなれば、意気盛んな紅の面々には勝てないだろう。

見送った紀佳に安堵の表情。

「紀佳。」

「会長！」

駆け寄った二人、香代と慶子もホッとしている。

「あれ、音無先輩いない・・。」

蘭のつぶやきにふと気づけば、いつのまにやら消えている完。

振りかえったら体育館を出ていくところ。

あわてて紀佳は追いかけた。

「ちょっと御礼言ってくるっ。」

この展開は彼のおかげだとわかっていたから。