「花紅柳緑」　１６．　決断

「花は紅　柳は緑」　１６．　決断

「軽音部？」

生徒会室に集まっている紅の面々。

会長の紀佳が顔を上げる。

その前にいるのは蘭。小首をかしげた笑顔が不安そう。

「ええ。新入生歓迎のミニコンサートをやりたいって。」

「例年そんなことやってた？」　香代が口をはさむ。

「いえ。初めての試みだから、できたら生徒会の後押しが欲しいって。」

「後押し？」

「体育館を借りたいそうです。」

「ずいぶん大掛かりじゃない？」　慶子が聞く。

「駄目でしょうか？」　思案げな紀佳に蘭がためらう。

「内容は？」

「えっと・・・・ポップと・・・ラップって・・。」言いにくそうに漏らした言葉に。

「ラップ！？」

紀佳は目を見開き、慶子と香代がガタッと立ちあがった。

「ねえまずいんじゃない？　このタイミングじゃ。」

「学校側を刺激するし、生徒も煽るわ。」

眉をひそめた紀佳に、口々に二人が唱える。

「蘭、ちょっとやめたほうが。」

「でも・・・役に立つって。」　蘭がそこで言い出す。

「え？」

「軽音部に入ったクラスメートが言うんです。

　学校側の説得に役立つからって。」

「どうして？」

「それはわからないですけど・・。でも、ラップのこと詳しい男子で。」

他の3人は顔を見合わせる。

「先輩、このままじゃにっちもさっちも行かない状況ですよね？」

確かにそうだった。

暗礁に乗り上げたままの事態。

生徒側、学校側、どちらを説得するにも決定打がみつからない。

「なら、一かばちかやってみたらって。」

どこか確信がありげな蘭に、考え込んだ紀佳は決断した。

「いいわ、学校に交渉してくる。」

「会長？」　慶子と香代が驚いた。

「確かに今は身動き取れないでしょ。

　やってみてもこれ以上悪くはならないわ。」

「でも。」

「試してみよう。」　紀佳の強い瞳。

こういうときの決断力は彼女に勝る人はいない。

なら自分達はサポートするだけだ。

「・・・・わかった。」

「じゃ職員室に行ってくる。」

「あ、あたしも行きます。」

ドアの向こうへ消える紀佳を、蘭が追いかけて行った。