「花紅柳緑」　１３．　対立

「花は紅　柳は緑」　１３．　対立

体育祭が近づく。

生徒全員に配ったアンケートの集計がとれた。

予想はしていたが、圧倒的に賛成派が多い。

多分、ラップ自体の好き嫌いよりも、学校側への反発なのかもしれなかった。

とはいえ、それも意志であり結果だ。

「80パーセントよ。数字としてもすごいね。」　いつも冷静な慶子が興奮気味だ。

「これだけあれば、学校側ももうちょっと考えるわよ。」

副会長の香代もやっぱり目を輝かせる。

「いいわ、これ持って先生達と交渉するわ。」　会長の紀佳も説得への自信を深める。

「でもー。」　蘭だけが不安そうだ。

３人の強さと自信をそれを支える努力を知っていても、

その強さと根拠は時に脆いものだったから。

生憎不安は的中した。

あまりにも圧倒的なアンケート結果に、日頃冷静な紀佳が煽られていた。

香代も慶子も。発足2年目の自信もあった。

かなり高飛車に迫ったその雰囲気は、学校側にも敏感に伝わってしまったようで。

裏目に出た。

「駄目だ。これ以上生徒の自由にするとなし崩しになりかねん。」

「そんな。これだけの意見が。」

「多数決が全てと言うわけじゃあるまい。」

「それはー。」

「大体ラップなんて音楽でもなんでもない。

　あんなので応援合戦なんてできるもんか。」

「偏見ですっ。」

「とにかく数だけで押し切ろうとするのは感心できん。」

態度を硬化させた学校側に、成すすべがなくなってしまった。

生徒会室に戻った紀佳は唇をかむ。

「数を頼みにしすぎたわ。ごめんなさい。」

「あなたのせいじゃないわ。」

「でもこれじゃ生徒も納得しないでしょ。アンケート結果はわかってるのよ。」

目を見交わす4人。

「学校側を説得する材料を探さなきゃ。」

「ある？　そんなの。」

「なくてもみつけるしかないでしょう。」

事態は暗礁に乗り上げた。