「花紅柳緑」　１２．　裏の緑？

「花は紅　柳は緑」　１２．　裏の緑？

全員振りかえった。

個々でも十分目立つだろうに、そろうとなんとも迫力のある４人。

蘭が「天羽」と呼んだ奴が応える。

「よ。何か用か？」

「なんで・・？」

「ん？」

「あれ、何だったんだ。」

「何って・・・・なんだっけ？」　天羽は仲間を見返る。

「あいつらこの界隈でやたら騒ぎ起こしててさぁ。それもつまんないのばっか。」

図体のでかいのが言う。

「そうそう、おもしろけりゃマシなのに。」　一番小柄なのが口をとがらせる。

「ちょっとお仕置きを頼まれてね。」　頭の良さそうなのが説明する。

「ってわけ。」　天羽がニヤッと笑う。

－－お仕置き？

「でも内緒な。おまえ、柳高か？」

いきなり聞かれたので、ボーっとしたまま頷く。

「何年？　見ない顔だな。」　天羽が聞き返す。

「２・・年。」

「へぇー。俺達３年だ。又逢うかもな。あばよ。」　でかいのが言う。

「ちゃんと彼女、送って行けよ－。」　天羽の眼が踊る。

それで全員クルッと背中を向けて行ってしまった。

笑い声が風に乗って届く。

遠ざかる彼らを見ていて、不意に空知の頭に思い出されたのは。

『生徒会のほかに、裏で仕切る奴らがいるんだって－』

まさか－？

長く伸びた彼らの影を見ながら、

空知の頭には疑問符がぐるぐると渦を描いた。

そのあとクラブに戻って。

再開したステージを聞いてから、蘭を家まで送って行った。

帰り道でいろいろ聞いた話。さっきの４人のことは言ってないけど。

「天羽先輩ってほら、有名でしょ。」

「名前はね。顔見たの初めてだった。」

「うーん、目立つのに人前に出ないものね。

　困ってると助けてくれる、みたいな。それを楽しんでる感じなの。

　だから人気ある。」

確かに楽しんでたな。

「さっき、ひょっとしたら・・・他にもいたのかな。」

「他？」ギクッとしつつ。

「天羽先輩って大抵つるんでるから。仲間も人気者そろいだけど。

　化学部長の永見先輩とか、サッカー部の清水先輩とか。弁論部長の音無先輩も。」

さっきのが多分。すげぇ大物ぞろい。

「部活もクラスもバラバラなのに、仲いいんだって。」

「よく知ってるな。」

「ほら、生徒会にいるから。いろいろね。」

蘭の家の前で別れ際、手を差し出された。

「ありがとう。今日は碓井君のおかげで助かったし、楽しかった。」

「・・・いや。」面食らいつつ、おずおずと手を出せばしっかり握られた。

「ね、又誘ってくれる？」

眼を丸くした空知。

「いいのか？」

「もちろん。約束ね。」

幸運の女神のように微笑む蘭に、空知はくらっとめまいを覚えた。