「花紅柳緑」　１０．　I'ts　a　show　time！

「花は紅　柳は緑」　１０．　I'ts　a　show　time！

まさか。

こんなところで「表の紅」しかもクラスメートに出会うとは。

やばい・・・ってのはお互い様か。

「びっくりした・・。」

「あたしだって。」おかっぱ頭を可愛らしく揺らす彼女。

「おまえ、一人できたの？」似つかわしくない。

「ううん。友達と待ち合わせたんだけど、

　急に来られないってさっき携帯に入って。

　ほら、体育祭でラップをって話、知ってるでしょ？」

「ああ。」

「あたし実はラップってよく知らなくて。一度聞いてみようと思ったの。」

真面目なんだな、と感心する。

なんでも積極的に興味を持ち、確かめようとする。そういう意志が眩しい。

「碓井君は？　よく知ってるね、こんなところ。」

「俺好きだから。もう前から来てるんだ。」

「えー？　凄い。」

「別に凄くないよ。」そっぽ向きかけて。

「・・・さっきの奴らは知り合い？」

「ううん。急に絡まれて。びっくりしたの。」

そりゃこんなところにこんな可愛い子がひとりじゃなぁ。

ちょっかい出したくなるかとちょっと同情しかけたら。

「何だよ、おまえらっ。」

大きな声に振りかえって驚いた。ステージにさっきの連中が乱入してる？

「うまくもないラップ、やってんなよっ。」

あいつら。騒ぎを起こしたいだけか？　クラブあらしかな。

空知が眉をひそめる。

「う、碓井君。」蘭も奴らとわかったのだろう。心配そうだ。

「俺らに任せたら？　もっとおもしろいぜ。」

「バカ言うな。」

「うるせえんだよっ。」

一人がそばのマイクスタンドをつかむ。

まずいと思った空知が前に飛び出そうとした時。

腕を誰かにグイッとつかまれた。

振り返ると知らない顔。自分より年上？

薄い色つきのめがねにくせっ毛。

「おまえさ、いい度胸だけど。あっちはいいからこの娘守ってろ。」

「・・は？」

男の顔を見て、蘭が声をあげる。

「え？　天羽先・・・輩・・？」

天羽？

聞き覚えがある名前の彼はしかし、ニヤッと笑っただけ。

「I'ts　a　Show　Time.」

それから突然叫んだ。

「ＴＲＹ！」

直後。

パッと明かりが落ちて、フロアは真っ暗になってしまった。