「花紅柳緑」　７．　懸案事項

「花は紅　柳は緑」　７．　懸案事項

「表の紅」－－生徒会室では、

近づく体育祭の懸案事項をどう取りまとめるかで話し合いをしていた。

「今回は学校側もかなり強硬よ。」　会計の慶子が思案げに首をかしげる。

「まぁ、わからなくはありませんから。」　蘭が微笑むとあたりまで明るくなる。

「ラップってある年齢以上の人にとっては、音楽じゃなくてうるさいだけなのよね。」

香代も頷く。

「だからって学校側の言いなりって訳にも行かないわ。」　紀佳が巻き毛を揺らす。

応援合戦でラップを希望する生徒側に対して、学校側の態度はまるで軟化しない。

どちらかといえば柔軟な考えを持ってくれるのが常なのだが、

どうも今回は先入観が先立っているようだ。

生徒会としても、苦慮している。

「要は生徒たちがどれだけそれを望んでるかってことを、

　形にして見せるのが大事じゃない？」　手にペンを持ったまま慶子が皆を見る。

「まずはアンケートを取りましょうよ。」

「アンケート？」　蘭が眼を見張る。

「各学年・各クラスが足並みそろえて希望ってことなら、

　学校側も考慮せざるを得ないんじゃないかしら。」

「なるほど。一里あるわ。」　香代が再び頷く。

「うまくすればそれって、生徒側の世論として切り札にもなるかも。」　紀佳がもくろむ。

「でも、どの学年もどのクラスも、万遍なく希望が出ますか？」

蘭がもっともな疑問を投げる。賛成がいれば反対もあるのが意見ってものだ。

「その時はそのとき。逆に生徒側を説得する材料にできるじゃない。

　希望者が実はそれほどじゃないってことで。」

「なるほどね。」　香代が感心する。

「とにかく、アンケートを取りましょう。時間がないわ。」

かくして全生徒に配られたアンケートが、次の火種になるとは誰も予想していないその一方。

体育祭に向け、事態の行方に強い興味を持っている生徒も幾人かいた。

「応援合戦どうなるのかなぁ。」

誰もいない放課後の屋上。

ヘッドホンでＭＤに聞き入る彼もその一人だった。