４．　＜　雨　＞


雨になった。
ねこは縁側で空を見上げている。


雨が特別嫌いなわけではない。
もともと猫という生き物が、水を好まないのは確かだが。

濡れるのが苦手なのだ。
非道い目にあったことがある。
でも。

逢いたいなぁ。


伸ばした首。
軒先からおちた雫がねこのひげをかすめた。
ひゅっと首を引っ込める。

きっといない。
竹林には雨宿りする場所なんてないと思う。
トラが濡れるのは嬉しくないし。

でも。

「逢いたいなぁ」


みゃあと細い鳴き声をあげる。
やっぱり、雨は嫌いかもしれない。
トラに逢えないから。

ううん、違う。
逢いに行けない自分が、情けなくなるから。


それは雨のせいなのか。
自分のせいなのか。


見上げる空。
垂れ込めた雲から銀の針は止まない。
水たまりは地に落ちた月のよう。

ねこが今日、お昼寝できないのは？


雨のせいにしておこう。
今はまだ。