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 ８．speech −挨拶−
披露宴のさいごはやはり、御礼の言葉で終わる。 マイクを握った羽矢の隣に美琴が寄り添った。 「今日はおいで下さってありがとうございました」 そこで羽矢は黙った。 用意したセリフはあるけれど、誰とももう語り尽くして。 これ以上付け加える必要もない。 「俺たちは二人で歩き出しました。色々あるでしょうし今後もご迷惑をかけるかと思いますが」 勘弁しろよーと草太のぼやきに笑い、みこっちゃんなら引き取るぞーという別の野次をにらみつつも。 繋いだ手に力を込めると、二人はそろって礼をとった。 「「これからもよろしくお願い致します」」 拍手は大きく温かかった。 「いい写真が撮れましたよ」 忘れていたモデルの件。満足げなカメラマンに羽矢はちょっと不安。 一体どんな顔をしてたんだか。 「まだフィルムがあるんで、皆さんでどうです？」 親族のみならいざ知らず。披露宴でありかと思うのだが、列席者全員での集合写真になった。 この数ではできあがっても顔が分かるかどうか、なんてことはお構いなしにみんなはしゃいでいる。 中央で苦笑する美琴と羽矢の真後ろに、志緒と千早。 「丁度いいや。俺等も式の代わり」 「えー。あたしもいつかドレスぐらいは着たい」 「ドレスねぇ。うんまぁ考えとこ」 「千早ー」 小競り合いのようでじゃれあいなのが二人だ。 斜めうしろから吉澤が話しかける。 「卒業式、思い出すな」 「あー、あたしもそう思ったぁ」 「ほんとだ。同じだねぇ」 美那子や鳴見の声が重なる。 顔を見合わせた二人はまた笑った。 「撮りますよ。いいですか。 １たす１はー？」 シャッターが切り取ったそれは記念日のひとコマ。 たくさんの人に囲まれた、新しい始まりの日だった。 |