| カコさんリクエスト |
 番外編 １８回目のキス −おまけ−
「で？ １年坊主達はお前に何くれたんだ？」 美琴の小さな頭を腕枕しながら、羽矢が聞いた。 「それがね、いろいろなの。 たぶんそれぞれ別々に買って、それをまとめてくれたんだと思うんだけど。 ハンカチとかバレッタとかかわいい手帳とか、ストラップとか。」 ふん。まあ順当かと思う羽矢。 「そう、だけど一つだけ。ブランドの口紅が入ってたの。びっくりしちゃった。 あんなに高いのもらえないんだけどなぁ。」困ったような美琴の顔。 「ブランドの口紅？」 高校生が生意気だな。誰だ一体？ 「名前、書いてないのか？」 「うん。どれもそうなんだけどね。」 ふと羽矢が思い浮かべたのは、代表して美琴に贈り物を差し出した１年の顔。 確か桐辻とか言った。妙に押しの強そうなところが気にくわなかった奴。 「でもなんであんな恥ずかしい失敗で、プレゼントもらうことになるの？ わかんない〜。」 ぶつぶつ言ってる美琴だけど。 実は最近、やけに綺麗になったと言われていることは本人は知る由もない。 もともと、噂にあまり聡くないところがあるし。ましてや自分のことだと。 教師達の間でも、羽矢は耳にしたことがあったくらいだ。 「柚華ですっけ。そんなに目立たない子だったのに、最近やけに綺麗になりましたね。」 「ああ、あの子ね。なんか目に付くようになってきましたねえ。 あの年頃はそう言う時期がありますからね。」 聞いていて誇らしいようでヒヤヒヤしていた。 「多少ドジな方が可愛気があるってことだろ。」 軽くいなして腕の中の美琴の髪にキスを落とす。 あんまり綺麗になるなよ。俺がしっかりつかまえるまでは。 頭に浮かぶ１年男子達。 たぶんあいつらだけじゃないんだろうな。 「そう言えば、ケーキ。・・・覚えててくれたんだね。あたしの好きなの。」 レアチーズケーキは美琴の好物。 「そりゃな。あれだけインパクトあったら−いてっ！」 鼻をつままれて顔をしかめる羽矢。 「おまえねー。」 「だって・・。古傷に触るからでしょ。」 文化祭がずいぶん前に思える。 「だからってな、人が探すのに苦労した・・・。」ふいに黙ってしまった羽矢。 その言葉に気づいた。来るときずいぶん遅かったのは。 「・・・探してくれたの？」レアチーズのバースディケーキ。 「ま、ケーキくらいはね。かっこつけられないだろ。」 知らん顔してつぶやくいたけど、すりよった美琴に微笑む。 「でもさ、これからは無防備にプレゼントとかもらうなよ、他の奴に。」 とりあえず釘を刺しておく。 「そんなことしないよ。今日はだって、しょうがないじゃない。」 「まあそうだけどさ。」 「琉斗さんだって、みんなにあれこれもらうこと多いくせに。知ってるんだから。」 口をとがらせた美琴は抱きしめられてあわてる。 「あ、こんな時間。あたし帰らなきゃ。」 「いいじゃん。朝まで。」 「明日学校なんだから。まずいってばー。教科書とか着替えとか。」 「朝早めに送ってやるよ。」 強引な理屈はいつものこと。 誰にもやる気はないけど。鎖を二重する必要があるかもな。 自分をつかまえている人が、そんなことを考えてるなんて夢にも思わないで。 美琴は諦めて、でも嬉しそうに目を閉じた。 それはちょうど日付が変わった時刻の二人ー。 ＜おまけ／end＞  |
|
お気に召しましたら、ポチッとおしてやってくださいませｖ |