僕は君を忘れない。
想いがこの世に残るものなら、生涯君を守っている。


僕を呼ぶ声。「愛してる」の囁き。
青を抱いた笑顔。
「ごめんなさい」の涙。

記憶の全てが僕を満たし続ける。


たとえそばにいなくても。
君が走り続けるなら。
それを見ていられた僕は、決して不幸ではない。


命が消える瞬間に思うのは君だろう。
青の手を握りながら。　紅子に見守られながら。
それでも君の名をつぶやくだろう。



君が僕を忘れても、僕は君と共にいる。
死が訪れて灰になっても。
空気中の有機元素に僕の想いは溶けて。

君に囁く。



愛しているよ
紫里ゆかり　





君がいつか立ち止まって、虚ろな心細さに泣くときは。
どれだけ月日が流れていても。
記憶の粒子となって君を包みこみ、癒すだろう。


君の記憶が僕を彩り、満たしてくれたように。





−「記憶」　了