彼女が主あるじに何かおねだりをしていた。

言葉はわからなくとも話す調子でわかる。
よくあるようで珍しいことだ。

なんだか楽しそうなので、私も主に甘えてみた。


主に撫でられるのは私の特権のひとつだ。
なにしろ彼女にはこの毛並みはない。

撫でられる私が気持ちいいのはもちろんだが、撫でる主も気持ちいいに違いないと自負している。主の表情でわかる。


「あぁまた、ジンがなんだか得意気」
「ジンと張り合ってどうする」
「だってー」


ふんと鼻息でひげが震えた。
まだまだ彼女に負ける気はない。





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