４．＜　最強　＞


いつ、とも。
どこへ、とも。
何一つ言わなかったのに。



見慣れた竹林は影と風。
今更思う。
ここは身を置きやすかった。
光と闇が交差するから。

煌々こうこう　と月が漲みなぎ　る空。
足元の影も黒々として。

自分には似合いの夜だ。
さぁ、行こう。

高く頭を掲げた、その時。


カサリ。
カサリ。


ゆっくり巡らせた視線の先。
光と闇で斑まだら　になりながら現れた、小さな体。


混乱した。


見上げる空はやっぱり墨色すみいろ　に金色こんじき　。
間違いなく夜の底だ。
なのに。


どうしてここにいるのか。
どうしてわかったのか。

胸にうずたかく積み上がっていく問いを。


「これから行くの？」

蹴り崩す声。


「そうだよ。　……見送ってくれるのかい？」
「それは無理かな」
「おや、ならどうして」

「見送れないよ。一緒に行くから」


呑み込んだ言葉も、強ばった笑みも。
混乱した頭ごと、身体ごと、混沌こんとん　へ突き落としてくれる。


君は最強。