１５．　＜　冠　＞


川が。
水面は光が煌めいても、水底は静かに流れていくように。


竹が。
枝先の葉は風に瞬いても、幹はどっしり立ち尽くすように。


笑ったり泣いたり。はしゃいだり沈んだり。
一時もじっとしていないねこが。
こんなにも揺るぎないことの、不思議。


返すものがないよ。
答える言葉がないよ。
逃げ水のように消えるよ。きっと。


それでも？
それでも。

そばにいて、変わらず届けてくるなら。
花から種がこぼれるように。
想いもいつか、芽を出し蕾をつけ咲くのだろうか。

もしもそうなら。



竹林の中、踏みしめる土は温あたた　か。
後ろからついてくるねこの気配は。
いつもと変わらぬ、よどみも迷いもない軽い足取り。

振り返ると、ぴんと立った耳。
光る毛並みの頭上に、幻が見える。
想いから咲いた、百花の冠。


花冠を、君に。





いつものように竹林で、寄り添って眠るふたり。
そんなに古くはない。
珍しくもない。

ねことトラの、お昼寝風景。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　nekotora-honpen　／　了＞