5. あか 侍 （危ない侍と娘） 5. あか 侍 （危ない侍と娘）
あか、は嫌いだった。 血の色だった。俺にはずっと。 鮮烈なそれは、まず父の死。 追って逝った家の者の死。 それから。 みずから死を与えた、たくさんの体。 血糊の雫を落とす刀。 昇る陽も。 沈む夕焼けも。 土手の彼岸花も。 全てが、血の色。 長く続いた、血の日々。 後悔はないが、振り返って甲斐もない毎日。 それが、今。 あか、は血の色でなくなった。 唇の色。 頬の色。 胸の先、頂の色。 花の色。 灯りの色。 陽の色。 あか、は別の意味を持って、俺に語りかける。 おまえによって。 俺は今、あか、を嫌わない。 あか、はこの胸にともって消えない炎の色。 それはきっと、おまえ自身ー。 ＜ 5 / end ＞ |
★あとがき★
この話は ９．満月 と対になります。あちらは娘サイド。
なにげに触れている、侍の過去。
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