番外編　「サルな二人」

番外短編　「サルな二人」

「いつから煙草、吸ってるの？」

あたるの問いに、天羽が首を傾げる。
はてな。

「はっきり覚えてない」
「えー？　そんな子供の頃から？」
「おまえね。小さい頃の俺は品行方正学業優秀・・・」
「ハイハイハイ」
「ハイは１回」
「へーい」
「・・・ちぇっ」

にらみ合ってから、笑い出す。
なんだか。

久しぶりに出したコタツ。
二人で丸まって呑気なお正月。
みかんを手元でクルクル回してるあたる。
煙を吐きながら、見ていて思い出す。

「いっちばん始めは中学生かな。
　高校入って増えた」
「おまわりさんにつかまるよ」
「もう時効だろ。それに」
「それに？」

「バスケに必死の頃は吸ってなかった」
あたるが顔を上げる。
「やっぱね。スポーツマンは気をつけるし」
「そっか」
「会社やめた後だな。考えてみれば」
こんなに吸うようになったのは。

根本だけの吸い殻をひねりつぶす。
一杯の灰皿にまた、あたるの視線。

「・・・吸いすぎだって言いたいんだろ」
「そりゃね。そんなに美味しい？」
「美味しいっていうか。もう動作の一部。
　無意識で吸ってる」
「口寂しくなるんだ」
「そうかも」

「それってなんとかのひとつ覚えみたい」
「サルか？」
「・・・サルに怒られそう」
「サルは煙草吸わねえだろ」
「チンパンジーとか」
「マウンテンゴリラは好きだな」
「どっちも吸わないよ」
「そりゃそうだ」
「禁煙したら？」
「は？」
「サル年だし」

クスクス笑ってるあたるの肩を。
ぐっと引き寄せる。

「俺の煙草を減らしたいなら、もっといい方法がある」
「へ？」
「口を寂しくさせなきゃいい」
「それっ・・・んんっ？」

煙草に見合う数のキスなんて。
効き目はともかく、美味しすぎる話。

「・・・苦っ・・美味しくないっ・・！」
「じゃ美味しくなるまで、姫始めも兼ねて？」
「ばっ、バカゴリラぁ～っ！！」

サルにだって笑われそうだけど。
始末に負えないこの人が、サルでもゴリラでも好きなんだから。
あたしもやっぱり馬鹿ってことよね、と一人ごちる。
とりあえず、彼の煙草をなんとか減らそうっと。

密かに掲げられた一年の計を知ってか知らずか。
あたるを抱いたまま伸ばされる手。
マウンテンゴリラな彼は。
また１本、火をつけようとしているー。

・・・A　Hapy　New　Year♪