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番外短編 「kiss−kiss−kiss」 ★side−amou 声？ こいつの声は、高いけど低い。 低くなったら要注意。結構爆弾。 手？ 腕も指も俺より細い。そりゃそうだ。 でもいざとなったらすげえ握力。 つかまったらアウト。瞬間強力接着剤。 眼？ これだけは俺よりでかい。でかすぎるかも。 まっすぐ射通すようにみつめると、逃げられない。 涙があふれたらまずお手上げ。 何だよ。 どこがフィフティーだって？ ９９対１？ そりゃ俺が１じゃねえか。 自覚がないから困るんだよな、こいつは。 返せ？ ああ、返してもらおうかな。俺に異議はない。 来いよ。 ☆ ☆ ☆ ☆ ★！ ってわけで返すフリして返してもらった。たっぷりのおつり。 口調だけはぬけぬけと。「今度は利子な。」 そしたら。 真っ赤になるくせに。震えをごまかすくせに。 即座に利子をかえそうとするから怖い。 ★！ それが逆に、そそったりするんだよな、こいつ。 実は砂糖付きの口紅ぬってないか？ 甘過ぎ。 やっぱり間違ってるぜ。９９対１どころじゃない。 返してもらうから。 無限大に。 覚悟しろ−。 ★side-ataru たとえば声。 からかうときは嫌い。 「バッカだね〜、おまえ。んなこと考えてたの？」 ごまかすときは嫌い。 「しらねえよ。気のせいじゃん？」 逃げるときは嫌い。 「俺、ちょっと出かける。」 だけど名前を呼ぶ声は好き。 「あたる？」 たとえば手。 腕を引っ張られるのは嫌い。 「さっきから呼んでるだろ。」 背中を押されるのはちょっと嫌い。 「ほら、やってみろって。」 肩をつかまれるのは嫌い。 「おまえねー。」 ・・・頭をクシャっとなでてくれるのは好き。 「しょうがねえよな。」 たとえば眼。 睨まれるのは嫌い。 「・・・ったく。」 のぞきこまれるのは嫌い。 「こら、こっち向けって。」 そっぽ向かれるのは嫌い。 「勝手にしろ。」 見つめられるのは、好きだけど嫌い。 「ん？」 微笑まれたらどきどきするから。 あれ。 結局あたしは、あなたのことばかり考えているみたい。 「ねえ、これって狡くない？ 恋愛は５０対５０って言うのに。 あたしが９９であなたが１だよ、きっと。あたしが損してる、絶対。」 そう言ったらソファに転がっていたあなたは呑気な答え。 「そっかぁ？」 「そうだよ。おつりが欲しい。」 「じゃさ、返してやるよ。」 そう言って手招きするから。 ソファに寄ったら急に遮られた視界。唇に温もり。 返されたのはキス。 「あ・あ・あのね〜。」 あっさり離れたそれに、真っ赤になって抗議したら。 「今度、利子よこせよ。」ニヤッと笑う。 「欲張り〜。」 「どっちが。」 ぷっとふくれかけたけど。やられてばっかりじゃ癪に障る。 あたしはまだそばにあったシャツをつかまえて、唇を押しつけた。 あたしにすれば利子付きのキス。震えをごまかす。 彼の目が丸くなるのがわかった。 離れかけた唇が。 体ごとつかまって。また重なる唇。 これってフィフティー？ やっぱり違う気がする。 知らないでしょ。こめた想いが無限大なこと。 ちゃんと返してよ。 無限大には無限大で。 あなたの瞳がウィンクした−−。 ★side−∞（無限大） 「・・・ねえ、なんでキスしてるんだっけ？」 首っ玉にかじりついているあたし。 「さぁな。ま、いいんじゃねえの？」 柔らかな髪に顔を埋めてる。俺。 「いい加減〜。」 クスクス笑うおまえの声が耳をくすぐる。 「そこが好きなんだろ？」 思いっきりからかうあなたの息が耳朶にかかる。 「バッ・・んんっ・・！！」 言葉を盗まれた。 言葉を封じた。 沈黙の中。 −キスの温度も無限大。 ＜kiss-kiss-kiss／end＞ |