初めて見た時から、彼女は目立ってた。


バリバリの会社だってのに、さらに人目を惹く。美人だけど美人だからじゃなくて。よく見れば小柄なのにとても大きく見える姿。ぴんと伸びた背筋で前だけ見て歩いていく。

何度も目にした。

カッチリと巻き上げた髪は随分長そう。縁なしのメガネを通しても、大きくハッキリした眼。くっきり描かれているリップライン。自分に似合う色を知っている。

彼女が通ると、自然に視線が集まった。
存在のパワー。



たとえば太陽と月なら。どっちも輝くけど自ら光を放つ方が俺の好み。
彼女のオーラもまた自ら放っているものだ。

誰だろう。
興味が湧く。俺は男だから余計に。


いつも逢えるとは限らないが、彼女は営業部らしく出入りが頻繁だ。出かけていく姿か戻ってくる姿。どちらかには遭遇していた。

いつのまにか、彼女のオーラを覚えてしまったらしい。ふと眼をやると必ず視界に彼女。出来る女っぽいよなぁ。男に混じって引けを取らない態度。でも決して傲慢でない笑顔。


いつも遠目。いつも一瞬。
興味といってもその程度。通りすがりの花を愛でるようなつもりだったのに。


ゆっくりと無意識に、想いは重ねられていった。
たとえば交わらぬ光でも、それと知らずに蕾を育てるように。



慈雨のような、時の中。





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