18. ドライブ 光姫×一星 18. ドライブ 光姫×一星
「ドライブに連れてって」 なんて唄があった。 確か、助手席でハンドル握る貴方をみるのが好き、 みたいな歌詞だったと思う。 普通デートっていうとそうイメージするよな。一般的に。 でも。 俺の惚れた人は一般的じゃない。 いろんな意味で。 「ちょっ、姫っ、いくら高速だからってとばしすぎ。落とせって！」 俺の言うことは耳に入ってるのか、入ってないのか。 いや、こっち向いてクイッと笑ったから、聞こえちゃいるんだ。 聞き入れる気はなくても。 夜半１１時過ぎ。彼女からの電話。 ドライブに連れてって、では決してない。 「ドライブに連れて行くから」 受動でなく能動。誘いでなく命令。 いかにも彼女らしい。 その強気が好きなものだから、俺には選択肢がない。 だからって。 「ひーめっ、つかまるよっ」 断っとくけど、俺はスピード大好き。 ジェットコースターは１日中だって平気。 バイクは５００。 ナナハンも取るつもりだ。ヒマさえあれば。 車の免許はいわずもがな。 いや、飛ばし屋じゃない。そんなにガキじゃない。 なんだけどさ。 「なぁ。聞いてるーっ？」 「聞いてなーいっ」 「あのね。俺も聞いてないよ。姫がスピード狂なんてさっ」 悪戯っぽい眼が俺を見る。楽しそうに笑い出す声。 それがどれだけ魅力的かなんて、 知っててやってるのかね、この人は。 「うーーんっ、気持ちいいっ」 「・・・まぁ、それは否定しないけど」 そういいながら、助手席上のハンドルをしっかり握る俺の手。 彼女は横目で確認してる。 「嘘つき。怖いんでしょ」 「スピードじゃなくて、姫の腕がね」 「しっつれいね。事故ったことないわよ」 「事故ったら終わりでしょ、このスピード」 姫は鮮やかな唇をとがらせる。 グロスの艶が光ってる。 「なんだ、一星は怖くないのね。つまんない」 「悪かったね。他の野郎は怖がったわけ？」 「さぁ？ 真夜中のドライブは人を誘ったことないから」 「・・・１度も？」 「１度も」 俺を見る彼女の眼は、無邪気なのか確信犯なのか。 「あたしのスピードを体感したのは、一星だけ」 その笑みに。 やられまいとして固く目を瞑っても、すでに遅いのはわかってた。 あとの祭り、って今更か。 これから必ず、誘われたらまた来るだろう。 死なばもろとも、なんて縁起でもないが。 一人じゃ心配で、行かせられそうにない。 クセになりそう。 真夜中、彼女との危ないドライブー。 ＜ 18 / end ＞ |
★あとがき★
たまには光姫も勝ちませんと（笑）
あ、仕事の時は至って安全運転なんですよ、彼女も。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お気に召しましたら、ポチッとおしてやってくださいませｖ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・