15. 禁忌 レン （水曜日の恋人） 15. 禁忌 レン （水曜日の恋人）
出逢った時から君を想った。 長く。 深く。 禁忌という言葉も知らなかった。 「あなたのおなまえは？」 小さな頭を傾げて君が聞いたのは、どこかのパーティー会場だった。 獣みたいに警戒心の強かった私も、あっさり陥落させた笑顔。 舌足らずな言葉。 「…蓮…」 「れん？ きれいななまえね。わたし、みゆき」 「みゆき？」 「そう」 そう言った君があたりまえのように差し出した白い小さな手。 「あっちにね。みゆきのすきなおかしがあるの。てがとどかないの。れんならとどくよね。とってくれる？」 何かを望まれること。 頼られること。 些細なことが私には初めてで、彼女はまるで天使のように見えた。 そう、触れてはいけなかったんだろう。 決して。 小さな手に引かれお菓子をとってあげた私に、君が再び向けた笑顔。 「ありがとう、れん。うれしい」 胸に灯った火がなんだったのか。 悟った時、別の事実も知った。 腹違いの長兄の婚約者。生まれた時からの両家の取り決め。 私には手の届かない存在。 この想いは、 禁忌。 決して手に入れることはできない。 あの手も。あの笑顔も。 望むことすら許されない自分にのたうちまわって。それでも。 出逢わなければよかったとは思わない。 誰の隣であろうと、君がいること。笑ってくれること。 それを垣間見ることだけが、唯一の希望だったから。 辛く長い人生を、生きていくため。 生き抜いていくためのー ＜ 15 / end ＞ |
| 07.03.07 改訂 |
★あとがき★
く、暗い。 レン、ごめんよ（＞＜）
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