4. めがね 天羽×あたる （おとこ運勝手につづき） 4. めがね 天羽×あたる （おとこ運勝手につづき）
あたしの視力は昔からいい。 たいして悪くなったことはない。 田舎で育った。 緑はもちろん、毎日遠くの水平線を見ていた。 そのお陰かも知れない。 だからなのか、めがねってちょっと憧れたりする。 単なるイメージだろうけど。 頭のいい人イコールめがね とか。 カッコイイ人イコールめがね とか？ 全部違ってたなぁ。 「・・・どういう意味だよ」 低い声に我に返った。 あ、あれ・・・・やばい？ １日の終わり。 早めに帰ってみると良之も居て、ふたりで晩ご飯になった。 お風呂の後で軽く晩酌タイム。 ほろ酔い気分でついつい、口をすべらせた？ 「あたる、どういう意味だよ」 笑ってるけど。 眼鏡の奧が・・・やばい。 「いや、だからめがねって憧れるって」 「そこじゃない」 「頭良いとかカッコイイとか」 「そう言ってないだろ」 ずいと迫られて体が退く。 「全部違ってた、ってのはどういう意味だ？」 笑みは浮かべてるけど、返って怖いかも。 ああ、まずい。 「あのね、それは」 こっちの笑顔が引きつりかけた時。 ブッと良之が吹き出した。・・・・なによ。 「バカ、本気でびびるな」 ひとしきり笑ったあと、こつんと頭を叩かれて。痛い。 上目遣いに睨んでやる。 「そんなもん、違って当たり前だ。 めがねかければ頭よくてカッコイイなんて、あるわけないじゃん」 「・・・そうだけど」 「試すか」 いきなり視界が歪んだ。 うわ、何これ？ 見えない見えない。やだ、気持ち悪い。 無理矢理かけられためがねをあわててひきはがす。 それを受け取ってかけながら、良之が笑ってる。 「俺は視力より乱視がきついからなぁ。世界が曲がるだろ？」 「・・・どうりで根性曲がっ・・・う、ううん。曲がってない！」 ギロッと睨まれてあわててごまかす。 地獄耳だぁ。 でも。 「なんか、かっこいいんだもん。 めがねをかけたりはずしたりの仕草って」 「かっこいい？」 「ちょっと違う・・・あぁ、色っぽいっての？」 何気なく言ったのに、急に黙った良之の眼の色。 えっと、いやその。 あれ？ 一気に顔が赤くなるのがわかる。 良之の顔が見られない。 眼が泳ぐってこういうことだ、まさしく。 「ほんとおまえって・・・天然」 苦笑とため息を掛けて割ったような顔。 伸ばされた手が頬を包むと、それが変わる。 何度か顔の輪郭を行き来したあと、親指が唇をなぞって。 「じゃ、ご期待に添いましょ？」 「・・・え・・・ぁ・・・」 もう片方の手は多分色っぽい動きで、 めがねをはずして座卓に置く。 でもあたしはそれを見ない。だってまぶたが落ちるから。 そうそう。 キスする時は邪魔だろうなって思ってたなんて。 今は言わない−。 ＜ 4 / end ＞ |
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